第3作 男はつらいよ フーテンの寅 新珠三千代

■データ
劇場公開日:1970年1月15日
観客動員数:52万6千人
料金:550円
上映時間:90分

■キャスト
車寅次郎:渥美清
諏訪さくら:倍賞千恵子
車竜造:森川信
車つね:三崎千恵子
諏訪博:前田吟
たこ社長(桂梅太郎):太宰久雄
御前様:笠智衆

染奴:香山美子
清太郎(染奴の父):花澤徳衛
信夫:河原崎建三
駒子:春川ますみ
徳爺:左卜全
信州の旅館の仲居:悠木千帆
お志津:新珠三千代(マドンナ)
諏訪満男:中村はやと
お澄:野村昭子
為吉(駒子の夫):晴乃ピーチク
茂造(為吉の兄):晴乃パーチク
源公:佐藤蛾次郎
千代:佐々木梨里
吉井:高野真二

■ストーリー
すんなりと帰るのが気恥ずかしいのか、とらやのすぐ近くから電話をし、寅次郎が旅から帰ってきた。
その早々に縁談の話しが待っていた。タコ社長の仲介で見合いをするが、現れた相手は寅次郎の知り合のお駒(春川ますみ)だった。
お駒から色々と事情を聞くと、亭主との揉め事でその腹いせに見合いをしようと思ったらしい。それで寅次郎はお駒を放ってはおけず、話をつけ、二人の縁りを戻してやったのである。

その夜二人の為にとらやで盛大にお祝いをしてやり、支払いは全てとらやへの請求である。そのことでおいちゃん、おばちゃん、博も交えて大ゲンカ。
気まずくなった寅次郎は次の日旅に出てしまった。

1ヵ月後、おいちゃんとおばちゃんが旅行に出かけたところ、旅先の湯の山温泉で寅次郎とばったり。
どうやら寅次郎はこの旅館の独身女将(新珠三千代)に惚れて番頭をやっていたのである。

その旅館で働く女中の染奴(香山美子)には病気で働けない父親がいる。
染奴はお志津の弟の信夫と恋仲にあったが、父親を食べさせる為には妾になろうとしていた。
寅次郎はそんな二人の仲を取り持って駈け落ちさせる事になるが、同時にこれは旅館の跡取り息子がいなくなる事を意味する。
結局この事が切っ掛けとなり、 お志津は女手一つでやってきた旅館を手放す決心がつき、自らも以前から付き合いのある大学教授・吉井氏の元へ嫁ぐ事となった。

何も知らない寅次郎だったが、旅館の女中からお志津の事を聞き、大変なショックを受けてしまい、別れの一言を残し、この旅館を後にすることになったのである。
そして、その年の年末年始、寅次郎を案じる「とらや」の人々が、ある神社のテレビ中継でバイをしている姿を見て安心すると共に、相変わらず旅館の女将を女房のように話す姿にあきれるのであった。

■感想
第2作の感想欄で「さくらさんを超える女性が現れなかったので、結婚に踏み切れなかった」と書きましたが、この第3作の冒頭で旅館の女中にさくらさんの写真を見せて「奥さんか?」と問われ、「まあな」とあいまいに答え、その後「いくら可愛くても妹じゃしょうがないや」とため息をつくシーンがあるが、この台詞がすべてを表しているように思う。

さて、この第3作は珍しくマドンナがとらやには来ない作品であり、とらやの人々との絡みが無いのが少し寂しい感じがする。
ただ、おいちゃんとおばちゃんは旅館で女将と会うのが唯一の救いである。

そんなこともあり、新珠三千代という典型的な美人大女優をマドンナに迎えた作品であるが、いまいち評価が高くない。
ただ、観客動員数は前回より多少は盛り返している。
徐々に寅さんファンを根付かせるきっかけになった作品かもしれない。

男はつらいよ」シリーズはマンネリ化を言われながらもギネス記録となる48作もの国民的映画に育ったのであるが、その試行錯誤の始まりがこの作品といっても良いかもしれないと思います。